ロシアのウクライナ侵略を糾弾し平和外交による即時停戦を求める趣旨文

1.ロシア(プーチン)はウクライナ侵略行為を直ちに停止せよ。

国際法、現在は国連憲章第 6 章 第 33 条において、いかなる紛争も「平和的手段による解決を求 めなければならない」と謳っている。これは、第一次世界大戦、第二次世界大戦の 2 つの大きな戦禍 を経て地球上の人類が到達した英知の結晶である。
さらに、戦後、この憲章の精神を踏みにじる形で 展開されたベトナム戦争、イラク戦争など、大国による小国への数々の武力侵攻が紛争を出口の見え ない泥沼へと導き、結果として無数の罪なき人命を奪い、また地球の生態系にも多大な打撃(ベトナ ム戦争時におけるアメリカ軍による枯葉作戦を見よ!)を与えてきたことを今こそ反省的に振り返ら なければならない。どんな紛争も武力に頼る解決を目指す限り紛争当事者はもとより、周辺国をはじ め世界の人々に恐怖と絶望感を植え付ける以外何物も生み出さないことを知るべきであろう。
我々はこうした観点から、プーチン=ロシアによるウクライナへの武力侵攻という野蛮極まりない 愚行を直ちに停止することを重ねて主張したい。

2.ロシア軍は、戦時国際法(戦争法)に反する、民間人、民間施設への攻撃を直ちに停止せよ。

いったん戦争犯罪に手を染めると、歯止めが効かなくなる。現在ウクライナ侵略行為を続けるロシ ア軍が行っている、民間施設への軍事攻撃、民間人を巻き込む戦闘がそれである。これまで積み上げ られてきた国際法(ジュネーブ条約)においては紛争当事者が従うべき戦時における取り決め(通常、 戦時法と呼ばれる)がある。これらには 1)捕虜に対する人道的扱い、2)民間人や民間施設を対象とし た武力攻撃の禁止 などが謳われている。こうした国際法の侵犯行為についても厳しく指弾されなけ ればならない。
もっとも、ひとたび戦争が勃発すると、これらの公約が守られることはめったにない。最も象徴的 な事例はアメリカによる広島、長崎への原爆の投下であろう。
一刻も早い戦争行為の停止こそが、こうした戦争犯罪を防止する最大の保障となることは言うまで もないであろう。

3.プーチンはロシア国民への言論弾圧をやめ、すべてのロシア国民への政治的自由を保証せよ。

プーチン=ロシアのウクライナへの蛮行をやめさせる最大のカギを握るのは平和を志向するロシア 国民自身の決起であろう。残念ながら多くの戦争当事国における実態がそうであるように、現在のロ シアに最も欠けているのは言論集会をはじめとする国民の政治的権利の自由の保障であろう。プーチ ン政権に反対する野党の指導者が囚われの身になっていることに象徴されるように政権の意向に反対 する国民の言論が封殺された状態にあることは、現政権の蛮行を支える最大の拠り所となっている。 その意味で対外侵略と対内弾圧とは表裏の関係にある。
この現状を突破するために、プーチン政権への批判をロシア国民を巻き込む国際世論としていかな ければならない。

4.日本政府は、核兵器禁止条約を批准し、プーチン=ロシアによる核兵器の使用を封じ込めよ。

ウクライナ東南部をはじめ、侵略行動をウクライナ各地に押し進めるプーチン政権は「ロシアが最 大の核保有国である」ことを自らの侵略行動を補強する威嚇手段としていることに注目しなければな らない。この挑発的発言に呼応するように国内では、米軍と「核共有」すべきだと主張したり(安倍 1元首相発言)、軍事費を対 GNP 比 2 パーセントに増額すべきだ、敵基地攻撃能力(=反撃能力)を 自衛隊が持つべきだといった他国を攻撃する能力を高めることが日本の安全に寄与するかのごとき言 説が少なからずみられる。しかし、こうしたことが実際に行われると我が国が仮想敵国としている近 隣諸国にどんな刺激を与えるか冷静に考えてみる必要がある。際限のない軍拡競争の末、些細なきっ かけによる軍事衝突への危険性を極度に高めることになるであろうことは想像に難くない。
では、プーチン=ロシアによる核の脅威からウクライナと世界を守る最良のそして最も現実的な術 は何であろうか?核の製造、使用、保有を全面的に禁止する核兵器禁止条約を日本政府が一刻も早く 批准し、それを核保有国にも呼びかけ核兵器の全面禁止の国際世論を高め、ロシアをはじめとする核 保有国による核の使用を封じ込めていくことである。
この問題を考えるうえで見なければならないのは、ロシアのプーチン政権が日本も批准している核 拡散防止条約(既定の核保有国の核兵器所持のみを認め、新たに核を保有しようとするそれ以外の国 の動きを封じようとするもの)の下でウクライナへの侵略を開始し、核兵器の使用も辞さないといっ た脅威をちらつかせながら、自らの侵略行動を一層拡大するばねとして活用しているという厳然たる 事実である。この事実が語りかけていることは、日本が批准し支持している核拡散防止条約がロシア による他国侵略行動の抑止にならないばかりか、むしろそうした行動を支え推進する役割すら担って いるということである。現保有国をはじめとするすべての核保有を禁止する核兵器禁止条約(日本政 府がその条約の批准をいまだに躊躇っている)こそが、こうした侵略行動に対する最も強力な防波堤 になることを示しているのである。

5.日本国憲法第 9 条の精神を生かした紛争の平和的解決へ国際的リーダーシップの発揮を!

いま日本国民が、そしてわが日本政府が取り組むべきことは、最大の核保有国と渡り合える軍事大 国化を目指したり、これまで以上にアメリカとの従属的軍事同盟に深くのめりこむことではない。20 世紀以降地球的規模で繰り広げられた世界大戦の惨禍の教訓から、多くの人命を犠牲にする戦争への 究極の抑止力は相手(敵国)を破滅に追いやるもの(軍事力)ではなく、戦争犠牲者による悲痛な心 の叫びににあることを再確認する必要がある。どんな物量による誘惑も、それを否認する人の心の強 さに分け入ることはできないのである。

今回のロシアによるウクライナ侵略行動を誘発したきっかけが、ロシアによる NATO(北大西洋条 約機構という軍事同盟)圏の拡大に対する恐怖に由来することは当事者のプーチン自身が強調してい るところである。ロシアが要求する隣国ウクライナの NATO への加盟阻止とウクライナの中立化がロ シア側の侵略行動を停止する主要な条件であったとしている。 こうしたロシアの言い分を額面通りとるならば一定の理があるように見えるかもしれない。しかし、 表明されたこれらの言い分とは別に、ウクライナ東部に住むロシア系住民の権利を保護するという名 目のもとにウクライナへの度重なる干渉を続ける一方、隣接するクリミア半島の武力による併合など 看過しえない蛮行を既にロシアは展開してきた事実から目をそらせることはできない。こうした事実 は、プーチン政権の実際の意図がロシア革命以前のツァー帝政ロシアの栄光復活を夢見る自国領土拡 大の野望にあるのではないかと疑わせる証左となっている。覇権主義的野望を動機としたロシアによ るウクライナ侵攻がいかなる意味においても正当化できないのは言うまでもない。

一方、我々は今回のウクライナ戦争を引き起こしたもう一つの要因にも着目する必要がある。それ は、こうしたロシアへの対抗手段として米欧諸国がとってきた NATO(北大西洋軍事機構)拡大政策 である。NATO は、旧ソ連邦崩壊時にロシアとの間に取り交わされていた NATO の不拡大公約をも 破棄する軍事的同盟の拡大を続けてきた。これは仮想敵国とされた当事国(ロシア)を異常な緊張状 態に置くことを意味する。そうでなくとも覇権主義的野望を持つ当事国が、こうした NATO 勢力に対 して、より優位な軍事力の保持と、隣接する小国への威嚇を強めるであろうことは容易に想像できる ことであり、実際にロシアは今回ウクライナ侵攻という形でそうした挙に出たのである。

NATO の軍事同盟による包囲で追い詰められた大国ロシアが隣接国への武力侵攻へと踏み切る間接 的要因となったのは、NATO加盟諸国のロシア封じ込め政策に一因があったことは否めない。こう した覇権主義的野心を持つロシアと、軍事同盟拡大策をとる狭間におかれ、その衝突の象徴的犠牲と なったのがウクライナであるとの見方もできよう。当のウクライナゼレンスキー政権が、軍事的中立 化という選択肢を拒否し軍事同盟 NATO への加盟に傾いたことは、NATO の拡大を恐れるロシアの 覇権主義的野望に油を注ぐ結果を招くことになったともいえる。

この問いについて考えることは、憲法第 9 条を有する我が国の平和や安全について考える際にある 種のヒントを与えているのではないだろうか。自国の軍事力の増強や、強力な他国との軍事同盟に寄 りかかることが必ずしも自国の平和や安全にとって有効な手段とはなりえないということ。武力によ る紛争解決という前時代的な(そして現在の国際法に違反する)泥沼を避けるために何よりも必要な ことは他国(とりわけ隣国)との信頼関係の醸成であり、そのためには武力や軍事同盟の力で他国を 威嚇する試みを放棄する日本国憲法第 9 条の精神を最大限活用した外交の積極的展開こそが日本の平 和と安全に寄与する最大の保障であることを示唆してはいないだろうか。(文責Website担当 M)

交流の広場のページに戻る

TOPページに戻る
参照

注 1) 国連憲章 第 6 章 紛争の平和的解決
第 33 条
いかなる紛争でもその継続が国際の平和及び安全の維持を危くする虞のあるものについては、その 当事者は、まず第一に、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関又は地域的取 極の利用その他当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない。
安全保障理事会は、必要と認めるときは、当事者に対して、その紛争を前記の手段によって解決す るように要請する。

注 2) ジュネーブ条約
非戦闘員および降伏者、捕獲者の保護
非戦闘員とは、軍隊に編入されていない人民全体[9]を指し、これを攻撃することは禁止されている。 また、軍隊に編入されている者といえども、降伏者、捕獲者に対しては、一定の権利が保障されてお り、これを無視して危害を加えることは戦争犯罪である。
まず降伏者および捕獲者は、これを捕虜としてあらゆる暴力、脅迫、侮辱、好奇心から保護されて 人道的に取り扱わなければならない。捕虜が質問に対して回答しなければならない事項は自らの氏名、 階級、生年月日、認識番号のみである。
また負傷者、病者、難船者も人道的な取り扱いを受け、可能な限り速やかに医療上の措置を受ける。 衛生要員、宗教要員も攻撃の対象ではなく、あらゆる場合に保護を受ける。
文民とは、交戦国領域、占領地での 敵国民、中立国の自国政府の保護が得られない者、難民、無国 籍者である。全ての文民は人道的に取り扱われる権利があり、女性はあらゆる猥褻行為から保護され る。文民を強制的に移送、追放することは禁止されている。
3 これらは、1949 年のジュネーブ諸条約と 1977 年のジュネーブ条約追加議定書IとIIにおいて定め られている。
戦争犯罪の処罰
戦争犯罪とは、軍隊構成員や文民による戦時国際法に違反した行為であり、かつその行為を処罰可能 なものを言う。
交戦国は敵軍構成員または文民の戦争犯罪を処罰することができる。
また国家は自国の軍隊構成員と文民の戦争犯罪を処罰する義務を負う。戦争犯罪人には死刑を処す ことができるが、刑罰の程度は国内法によって定められる。
特に重大な戦争犯罪として考えられるものとしては、非戦闘員への殺害・拷問・非人道的処遇、文 民を人質にすること、軍事的必要性を超える無差別な破壊・殺戮など様々に考えられる。
1998 年には、戦争犯罪等を裁く常設裁判所として国際刑事裁判所規程が国連の外交会議で採択され た。

出典:ウイキペディア: